坊っちゃん

坊っちゃん (岩波文庫)

 「親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。」という一文からこの物語は始まる。損ばかりしているのは性格的なものが原因である。そういう性分だから損をしても仕方がないと言うのだ。いわゆる、文学的性格の主人公によくあるような、深みに嵌って行くじめじめとした思考がない。だから、この物語はとても「からり」としている。そこが好きだ。でも、諦めが良過ぎるのも少し寂しい。本当は損なんてしたくはないのだから。